SOHO'S REPORT
Backnumber
2002/07/11 シンガポールのホームオフィス支援政策

シンガポールでは、技術系企業家の促進支援のために2001年11月に一部地域で
試験的にホームオフィスの開設を許可した。シンガポールは面積646km2(東京
23区(617km2) とほぼ同じ)と小さい島国の中に401.8万人(2000年。含1年
以上在住外国人)が住んでいる。
政府の積極的な指導力のもとアジアにおける多国籍企業の統括拠点として発展
してきた。ビジネスの環境を重視するシンガポールでは、日本の政策と違い、
技術系の企業家の育成に重要だと認識しながらもホームオフィスの導入には慎
重である。
1961年に設立されたシンガポール経済発展評議会(EDB : The Singapore
Economic Development Board)は、シンガポールの技術系の企業家の育成、支
援が21世紀のシンガポールの重要な戦略と捉え、テックプレナーシップ21
(TECHNOPRENURSHIP 21)を設置した。テクノプレナーとはテクノ(技術)と
アントレプレナー(企業家)の合成語である。
その中でテクノプレナーホームオフィス(Technopreneur Home Office)の推
進を行っている。

テックプレナーシップ21(TECHNOPRENURSHIP 21)
http://www.sedb.com/edbcorp/programmetechno21.jsp

ホームオフィスは都市開発と密接な関係があるので、シンガポール都市再開発
局(URA : URBAN REDEVELOPMENT AUTHORITY)がガイドラインを発表している。

URAはシンガポールの土地開発の長期戦略プランの設定とプラン達成のための
地域開発を調整を担当している。

シンガポール都市再開発局(URA)
www.ura.gov.sg

既に、ホームオフィスの建設はStraits TradingとFar East Organisationは
China Squareにて開始している。また、JTCも最近設立したBuona Vista
Science Hubにて提供を開始している。
いずれもシンガポール都市再開発局(URA)が提示したホームオフィスのガイド
ラインに従っている。試験地域は商業地域から選び次の5ヶ所である。

Roberts Lane
Beach Road
Lavender Street
Mohamad Sultan Road
Club Street/Cross Street

シンガポール都市再開発局(URA)によるホームオフィスの定義は次の通りであ
る。

「ホームオフィスとは住居を6人以下の従業員でオフィスとして利用すること。
また、200 square metres以内の広さにすること。」

現在でもホームオフィスはある程度認められている。しかし、それはフリーラ
ンスのライター、フォトグラファーなど一部の業種に限られている。
今回は技術系の企業家を対象にした取り組みである。例えば、次のような職種
はホームオフィスとして許可される。

·アプリケーションソフトウェアのプロトタイプの開発者
·コンピューターで使う電子回路の設計者
·B2B/B2Cポータルコンテンツプロバイダー

逆にIT関連であっても次のような職種は許可されない。

·コンピュータの修理、サービス
·講習クラス(IT講習を含む)
·製品の組立て、梱包(電子製品を含む)

2001年11月にURAが発表したガイドラインの中に「近隣の人々に迷惑をかけた場
合、許可を取り消す」という項目がある。ビジネスや住まいの環境にこだわる
シンガポールの姿勢が伺える。

ホームオフィスとして利用する条件

1.ユニットの住所は会社の登記住所を使うこと。
2.ビジネスの表示は管理会社の許可を得ること。
3.1世帯の従業員が6人以下であること。
4.騒音、タバコの煙、悪臭、ゴミ、人や車の出入りは近隣の人々の迷惑をかけ
ることは厳禁。
5.広告やポスター、ビジネスの勧誘などはしないこと。
6.危険な化学物質や物を保管しないこと。
7.全般的に生活するのに安全にすること。通常の住居者の電気消費量を越えな
いこと。(URAの発表より)

2001年11月20日より、オーナーは試験地域でのホームオフィスとして使用許可
願いを提出できる。

URAではホームオフィスの魅力について数名にインタビューをしている。

○Elaine Ong(在宅ワーク希望者)
「会社に急いでいく必要もないし、家で快適に仕事ができる。通勤時間が減る
ことで自分の自由な時間が増える。仕事と生活の場所が同じことは便利だ。車
さえいらない
かもしれない。ライフスタイルが変わるというだけでなく、自分のビジネスを
開始しようとする人にも大きなプラスがある。専門家やビジネスマンが家をオ
フィスとして使えると柔軟な仕事ができるだけでなく、オフィスの賃貸料の節
約にもなる。」

○Henry Chua Hock Guan(ドットコム企業の経営者)
「ホームオフィスにより、私のビジネスを家にいながら拡大することができ
る。
会社の開設費用に悩まされることがなくなる。」
(URAホームページより)

日本との違いは、ホームオフィスをシンガポール政府が考える経済の重点分野
である先端技術を開発する企業家の促進支援に焦点をあてていること、また、
住民の環境にも十分配慮をしていること、窓口が一本化していることなどであ
る。
実績としてのデータはまだ無いが、シンガポールのホームオフィス支援政策が
経済の活性化に寄与することを期待している。






メールはこちらまで。

soho asia トップページへ