SOHO'S REPORT
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2001/06/21 好きな本

私の「好きな本」は、何と言っても司馬遼太郎著書の「竜馬がゆく」である。
この本については、ご存知の方も多いことだろう。私は特に、竜馬の「自分の私利私欲のためではない」、「高い志をもちながらこれからの日本について考えていた姿」に非常に共鳴する。幕末も現代の世も、世の中はあまり変わっていないのではないかとさえ感じる。くじけそうになると
この本を読み直し、「また頑張ろう」という前向きな気持ちにしてくれる本だ。

また一方で、私の考え方のベースになったと思われる本がいくつかある。
それは、学生時代に習ったドイツ文学である。私は残念ながら優秀な生徒ではなかったので、詳細をあまり覚えていない。しかし、その中でも印象に残ったものがいくつかあるので紹介したい。

私のゼミ担当であったT教授は、ゼミが始まってすぐ、突然亡くなってしまった。後継者として担当して下さったM教授は、「皆さんは、T教授のゼミを受けたくて集まられた方々だから、あなた方の好きなものをテーマに選んでいただきたい」という方針で、私たちが自由に研究できるようご指導して下さった。それは、いくつかの小グループに分かれ、グループごとに作家について研究し発表するという形式であったが、そのおかげで、1人の作家を突き詰めて研究するのではなく、いろんな作家の本を読むことになったのである。当時は原書を読んでいたので、とても大変だった記憶が残るのみで、内容についてはあまり深く残っておらず、今思うととても残念だ。

しかし、以下の3作品は、そういう中でも私の中で強烈な印象を残している。
まず、「トゥーレの王」という詩である。これは、卒業後しばらくの間、ドイツ語と日本語訳と両方を書いて部屋に張っておいた。いつもこの詩を読んで自分の支えとしてきた。

次に、「カッサンドラ」。これは、人に裏切られても裏切られても、人を信じようとし続ける女性の話である。当時の私は、どうしてそこまでできるのかその女性のことが理解できなかった。しかし、今でも強烈な印象として残っている。

最後に、ブレヒト作「セツアンの善人」。これは、舞台等でご覧になった方も多いと思うが、以前は「栗原小巻」が主演を演じていた。現在は、「松たかこ」が主演で上演されているようである。「いい人でいようとすると苦しんで報われない。でも、悪いことをしている人の方がいい生活をしている」という世の中の矛盾を描いている。これを読んだ時、「人間とは、本当はどう生きていけばいいのだろう」と非常に考えさせられた。

これらの作品は、非常に大きな影響を私に与えた。また、どれも、生きること、人間の内面性について随分問いかけてくれたと思う。当時分らなかったことでも、ふと思い出し、「あの時のことは、こういうことだったのだ」と気付くこともある。

本来、本とはそういうものだと思う。即効性があるものではないが、後々、その人の血となり肉となり、いつしか身についていくものであろう。

人間は弱いものだと思う。だからこそ、自分を律したり、支えたりするものが必要になるのだ。
本とは、その手助けの一端を担っているのではないだろうか。自分にとってバイブルとなる本に出会えれば、本当に幸せだと思う。






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