SOHO'S REPORT
Backnumber
2002/03/28 胡 暁子さんからのメッセージ

前回少し触れたように胡さんからメッセージを預かっているので、今回はそれを紹介したい。

『日本の若い人達に』
私達は明日の為に備えのある国民にならなければなりません。米、中の間に挟まれ今までに
経験しなかった事態を迎えようとしております。
日本の将来は貴兄達の手中にあります。存続できるか否か、貴兄達の毎日の心がけ次第。

ご自分たちで自分の国だと確信できる国が、衰亡・消滅するかもしれない曲がり角がすぐ目の前まで来ていることを貴兄達は気付いていられるだろうか。自分の国と信じられる国を失ってしまったらどんなにみじめな思いをしなければならないか、一度でも考えたことがおありですか。

世界をみまわして御覧なさい。戦争に明け暮れ闘争また闘争。こうした国々の国民が被る悲惨。ニュースを通して目に耳に入っているでしょう。今こそ、少し遅いのだけれど貴兄達がこぞって、はっきりと自分の意見をもち、自分の生き様に誇りをもち、人々の為に協力して、より良い社会を、日本だけの為ではなく世界の為に、懸命な集団に、ひとりひとりの自覚の元に協力うちたてることが大切です。

しかし、自分の主張を言葉にする前に、人を傷つけないように相手を納得させることの出来る方便で行使しなければなりません。仏教では、観音菩薩は33に身を変じて人々に教えられたと説いております。私達常人は、不可能に近い事ですが、一本調子ではいけないと言う事です。
相手が理解のゆくように話さなければいけない。
相手がなるほどその考え方は良いと思ってくれなければ、声を出す意味もなくなります。

日本は平和憲法によって戦うことを放棄しました。真に良い事と信じます。平和国民であり平和な国に住む平和な人々の集団でなければなりません。しかし現状はそうした優しい思いやりのある賢い集団が日本に出来上がっていません。他国からは、騒がしいセックスクレージーな集団としかみられていない。甚だ残念なことです。他の国の人々は、動物の臭覚で日本を観察しています。真から優しい毅然とした人間になる必要があります。すぐ興奮、切れてしまうような集団にならないよう、優しく人々のお世話をする人々の集団になってこそ、初めて平和憲法をもっている価値があるのです。

「青年よ大志を抱け」という言葉があります。私は「青年よ志をもちなさい」と申し上げたい。
人より抜きん出た人になるには、DNAと運命を必要とします。しかし、世の中、出世すること、
お金を沢山集める事だけが、この世に生まれてきた意味ではないと思います。
人知れず、こつこつ自分の与えられた仕事を一生懸命にこなす事も社会の一つの枠組です。
人はそれぞれ演じなければならない役割があります。世の中を一つの舞台として、主役、脇役、化粧係、衣装係、照明係、黒子等々それぞれの担当が受持ちを100%にしようと一生懸命。
これが時を得、観客の心に響く舞台を作り上げることが出来るのです。

日本の戦いは、世界の人々を友人にすることにあるのです。社会に於いて自分が陽のあたる場を占めていなくとも、自分の存在を卑下することなく絶望することなく、何かのお役に立とうと努める心意気が大切です。やがて、その心意気が貴兄を陽あたりの良い状態にします。私はそれを信じています。

私に例をとれば、私は未熟児に生まれ、世の中に出現した後、ガラス箱の中で数ヶ月過ごしたのです。両親は、既に姉を亡くしていたので私を生かそうと必死に育ててくれました。私も素直にこれに協力しました。肝油、河原の石の上にテントを張っての生活、三保の松原の下を歩く、うなぎの肝毎日六本。その成果、15歳で丈夫になりました。

先見の明をもつ父、生活に必要な教訓を教えてくれた母。私は十代の後期、父に反抗し結婚しましたけれど、若くして亡くなってしまった父の志を継ぎ報いたいと努力して参りましたし、命ある限り努めたいと考えております。

人々は感謝の気持ちを持たなければなりません。日本には「お陰様で」という素晴らしい表現があります。私も今日、こうして皆様のご協力があればこそ、健全な生活をさせて頂いております。過去において悪い人にも何人か会いました。でもその人たちは地下に落ちて行きました。私は正義を信じております。貴兄達も、より良い社会を作る為に今日から志をたて生き抜いて下さい。
人生には、悲しみ苦しみもついて参ります。それは、私達を鍛え磨くためにそうあるのです。


【プロフィール】
胡 暁子(おう あきこ):昭和三年、東京都生まれ。文化学院卒。
著書:「国際人へのパスポート 〜日本人への直言〜」 番町書房 1973年刊
「晴れもよし、雨もまたよし 〜ある国際女性の生き方〜」講談社 1984年刊








メールはこちらまで。


image1.gif
soho asia トップページへ